猫のしつけ

猫の行動特性からみたしつけ

 単独者であるため、他のねこに強さをアピールしたり、服従する行動はありません。
家庭の中での飼い主との関係は、母子関係または兄弟姉妹関係のどちらかです。それはねこの行動から分かります。

◆母子関係: 飼い主に始終体をこすりつける、膝に上がれば飼い主の懐に潜り込む、顔を腕の中にうずめる。

兄弟姉妹関係: 直接的な体の接触は少なくても、飼い主を避けるわけではなく、横でじっとしている。


  いずれにせよ飼い主との関係は、本当の母子や兄弟姉妹関係ではないことは彼らは非常によく分かっています。 そのような素振りをすることでうまく人間社会と共存して集団生活を行っているのです。極度の緊張状態では、ねこは飼い主を頼りとしません。狭くて安全なところに隠れます。そのようなときに手助けをするとかえってねこから攻撃を受けることもあります。犬のように飼い主をずっと覚えていることは少なく、環境が変われば別の人
と新しい母子関係をきずくことも比較的容易です。

しつけの方法

 ねこをしつけることは非常に困難です。(絶対的な順位がない、服従性がないため) ある状況で飼い主が優位に立って叱りつけてもその、その場限りでまた同じことを繰り返します。 十分に成長していない子ねこの段階であれば、盲目的に母に従うので比較的しつけがうまくいきます。
 ねこにとって重要なのは安全かどうかであり自分自身の身に危険を感じない限りやりたいことをします。
 飼い主が口うるさくしつけようとしても、ねこにとってはその行動が悪いとは理解せず、飼い主が自分を嫌っていると理解します。結果として飼い主との関係を解消させてしまうことになりかねません。初めからねこはしつけられないものと認識しておきましょう。

〈有効策〉 ねこの近くに触られて困るものは置かない。ねこの生活する部屋を決める。(他の部屋に行かせない。)
◆ 都会生活では、事故防止、隣人への配慮、繁殖の増加を防ぐために、屋内で飼うことも進められます。

〈屋内で飼う場合〉 触ってはいけないもの、入っては行けない部屋に近よらせないようにするにはどうすればよいでしょう? ねこがものや場所が危険だと感じることです。例えば、ねずみ取りを上下逆にして使う(ねこ自身は傷つかず、大きな音がしてねこはびっくりする)粘着テープを敷く。

トイレ
 最初にお話したように猫はしつけると言うよりも猫が必要とするものを用意すれば良いのです。猫の気に入るトイレを適切な場所に用意してあげれば自然にそこで排泄するようになります。しつけに苦労する事はまずありません。
猫が気に入るトイレとは?
 それまで子猫を飼っていた人に子猫がいままで使っていたトイレの容器や砂の種類を聞いておきます。それと同じタイプの容器と砂を用意します。排泄物の匂いのついたそれまで使っていた砂を分けてもらい、新しいトイレの容器に入れて匂いをつけておきます。
切なトイレの場所と数

 子猫を部屋に入れたら、ほかの部屋にいけないようにドアを閉めておきます。(トイレから遠くに行ってしまってトイレがわからなくなるのを防ぐためです。) 一部屋に気持ちの良い寝場所と食事そして少し離れたところにトイレを置きます。
 最初にトイレの場所につれていき、匂いを嗅がせておきます。最初のうち何度か定期的にトイレの中に入れてあげます。そのうち一回でも排泄すればそれでOK。

 それからはそこでするようになります。トイレにすっかり慣れたら猫の行動範囲を広げてあげても良いでしょう。またトイレの場所を変えたければ、トイレに慣れてから、少しずつ場所を移動させましょう。ただし猫が落ち着いて排泄できないような場所や猫が近づきたくないような場所に移動するとトイレを使わなくなることがありますので、猫の様子を見ながら慎重に移動させてください。他の部屋に移したいときは慣れるまで両方の部屋にトイレを置くと良いでしょう。

 またトイレの数は最低でも猫の数だけ必要です。(猫が3匹いたらトイレは3個以上)猫が増えたらトイレの数も増やします。

トイレを覚えた後にも気をつけたいこと
 このように猫のトイレのしつけはとても簡単です。しかし覚えたはずのトイレを突然使わなくなったり、トイレ以外の場所で排泄し始めたりすることがよくあります。この問題行動のきっかけとして最も多いのがトイレの汚れです。猫はきれい好きですから、トイレが汚れていると仕方なく別の場所で排泄し始めます。ですからトイレはこまめに掃除しましょう。外出等で長時間排泄物を取り除けない場合はトイレを余分に用意しましょう。

爪とぎは猫の習性
 屋外では猫は木の幹などでよく爪をとぎます。この爪をとぐ行為はヒョウなどの野生の大型の猫族でもみられ、実際に爪を整えると同時に自分の存在を示すためのマーキング行動でもあると言われています。爪をとぐ事は猫の習性ですから、これをしつけでやめさせることは不可能です。猫にお気に入りの爪とぎを用意してあげましょう。
猫が気に入る爪とぎとは?
 私は「うちの猫は市販の爪とぎに見向きもしないのです。」という相談をよくうけます。そこでどのような場所で爪とぎをしますか?というアンケートをとったところ多かったのは壁、じゅうたん、ソファ、柱、たたみという結果でした。
 爪とぎにはその素材、形、大きさ、置く場所などの要素を考えて与える必要があります。
素材
 動物行動治療学の著者Dr.ハートの研究では、猫が最も好む素材は縦糸が長く見えている生地だったそうです。このことは本来猫が木の幹で爪をとぐことからもわかるように、樹皮のように縦に裂けるものが爪とぎに適しているためでしょう。市販の爪とぎによく使われているループ状の絨毯生地は、爪がひっかかってしまうため好まない猫が多いようです。爪とぎの素材の好みは猫によって異なりますので、現在その猫が爪とぎに使っている場所があれば、それと似た素材のものを与えるのもひとつの方法です。
形・大きさ
 野生の猫の爪とぎ行動を見ると、後ろ足で立ち上がり、木の幹に前足をのばして爪をとぎます。体をのばして爪をとぐためにはある程度の大きさや幅が必要になります。後ろ足で立ち上がった姿勢で爪をとぐ方がより自然に近い状態ですから、爪とぎは床に水平に置くよりも垂直に置いた方が好む場合が多いようです。このことは爪とぎがマーキング行動でもあり、垂直面の方が視覚にうったえる効果も高いことからも納得できます。
場所

 素材や形の気に入った爪とぎでも置く場所によっては猫が使ってくれないこともあります。前述のように爪とぎはマーキング行動でもあるため爪とぎの場所は猫にとって大きな意味を持ちます。つまり縄張りの目印としての意味もあるため、目立つ場所が好まれます。また寝起きに爪をとぐことが多いので、普段猫がよくいる場所、眠る場所のそばに置きましょう。

 お気に入りの爪とぎが用意できたら、爪とぎに猫の前足をこすりつけて匂いをつけておきます。猫は爪をとぐ際、猫の足の裏や指間にある腺からの分泌物の匂いをつけることによって、視覚と臭覚の両方の目印をつけていると考えられています。そして一度気に入った爪とぎが見つかると繰り返しその場所を使う傾向があります。匂いをつけることによって猫が再びこの場所を使うように誘うわけです。

 もみぞうのお気に入りの爪とぎは市販の段ボール製の爪とぎを木製のテーブルの上に3つ並べてしっかり固定したものです。これを普段よくいるリビングの壁際においてあります。市販の爪とぎは猫が体を伸ばして使うには小さすぎる場合が多いようです。また床に置いたり、壁にかけるだけでは不安定なために爪とぎが動いてしまい、猫が好まない場合があります。あなたも猫のために特製の爪とぎを工夫してみてはいかがでしょうか?